1.PPM(Product Portfolio Management)の概要
1970年代にボストン・コンサルティング・グループの開発
製品および事業のポートフォリオのフレームワーク
「市場成長性」と「市場における自社のシェア」の2つを軸に、
各事業の事業規模の大きさを示す円でプロットし、
事業利益創出の難易度、追加投資の必要性を明らかにする
2.PPMの縦軸と横軸
縦軸:「市場の成長性」
成長性が高い市場は魅力的な事業ドメインであり
新規参入が多く、競争が激しくなる
事業を展開する際には、積極的な投資が必要
成長性の低い市場は市場のプレイヤーに動きがなく
市場シェアが固定化する傾向にある
積極的に投資する企業は、ほとんど見かけない
横軸:「市場シェア」
市場シェアが高いとスケールメリットがある
たくさん作れば作るほど、単位量あたりの生産コストが下がり
同じ価格で製品を売る場合に有利になる
市場シェアが高ければ高いほど、利益を確保しやすくなる
3.PPMのマトリクス表記
4象限のマトリクスで構成される
企業が展開する複数の製品・事業の戦略の方向性を4象限で示す
(1)問題児(育成すべき段階 Question Mark)
市場の成長性が高く魅力的ではあるものの、
市場シェアが低いため、コストがかかっている事業
成長性が高いため市場競争が激しく、
同市場で事業を継続させるためには、積極的な投資が必要
事業は市場シェアが小さいため費用が大きくなり利益を創出しにくい
将来の成長性が期待できるため積極的な投資をすべき事業
他の事業から得られた利益を、積極的に「問題児」に投資する
(2)花形(現在の取り組みを維持・継続する段階 Star)
市場の成長性が高く、市場シェアも高い事業
市場の競合も多く市場競争が激しいため、
積極的な経営資源(ヒト・カネ・モノ)の投資が必須
市場シェアが高いため、利益を出しやすい
出た利益を再び本事業に投下し市場競争を勝ち抜く
(3)金のなる木(投資を抑えて収益を回収・収穫する段階 Cash Cow)
市場の成長性は低いものの、高い市場シェアを獲得している事業
市場は成長性が低く、「花形」に比べると市場競争も激しくない
積極的な投資を必要としない
高い市場シェアを獲得しているため、スケールメリットの観点から、
事業コストが低く利益を出しやすい構造になっている
利益が出やすいにもかかわらず、積極的な投資を必要としないため、
稼ぎ出した利益は、「問題児」や「花形」に投下する
(4)負け犬(撤退する段階 Dog)
市場成長率が低いため市場競争は穏やかで、積極的な投資は必要ない
市場シェアが小さくスケールメリットが働かないため、
利益創出は難しい
成長性が低い上にコストがかかり利益の創出が難しい
事業を整理して、経営資源を他の事業への分配を検討する
4.PPMの問題点
2次元マトリクスは、説明力に限界がある
現状では市場シェア・市場成長率がともに低い事業であっても、
社会貢献という観点から存在意義のある事業として
撤退せずに継続すべきという判断が下される場合がある
PPMを適用する際に注意する点
事業間のシナジー(相互作用)が考慮されない
現時点での市場成長率や自社の相対市場シェアでしか評価しない
潜在的に成長可能で成熟市場に属する事業には資源投入しない
5.BusinessScreenの概要
1970年代にゼネラル・エレクトリック(GE)がマッキンゼーと共同開発する
「業界の魅力度」と「自社の競争上の地位」の2軸をそれぞれ3段階に分ける
事業を合計9つのタイプ(9象限のマトリクス)に分け、
タイプ(象限)ごとに資源配分方針を定める
6.BusinessScreenの縦軸と横軸
縦軸:業界の魅力度(8つの尺度で評価する)
市場ライフサイクル:導入期、成長期、成熟期、衰退期
市場:成長率、安定度、セグメント化(細分化)の程度
セグメント:ターゲットの人口動態推移、地理的要素
競争の程度:買い手の交渉力、売り手の交渉力、
寡占度、参入障壁、撤退障壁、垂直統合度合い
マクロ要因:政治、経済、社会、 技術
収益性 :利益率、キャッシュフロー
産業構造:資本集約型、労働集約型、固定費型、変動費型
ビジネスモデル:ストック型、フロー型
横軸:競争上の地位(6つの尺度で評価する)
シェア:相対的マーケットシェア
経営資源:ヒト・モノ・カネ・ノウハウ・情報・顧客資産
マーケティング:企画力、商品力、知名度、販売力、
チャネル支配力、ブランド力
生産管理:技術力、品質、価格競争力、納品リードタイム、
特許、オペレーション
業務プロセス:効率化の程度、自動化の程度、IT化の程度
財務:資金調達力、内部留保
7.BusinessScreenの活用方法
優先順位高(左上部分)
業界の魅力度が高めで自社の競争地位も高めの象限
より大きな競争地位を確保していく
PPMでは「花形」、花形になりつつある「問題児」に該当する
業界の魅力度(高)×競争地位(高)=地位防衛
業界の魅力度(高)×競争地位(中)=テコ入れ
業界の魅力度(中)×競争地位(中)=地位確保
優先順位低(斜め部分)
業界の魅力度が低めで自社の競争地位も低めの象限
利益の回収や撤退を検討する
PPMでは「金のなる木」、「負け犬」に該当する
業界の魅力度(低)×競争地位(低)=撤退
業界の魅力度(低)×競争地位(中)=利益確保
業界の魅力度(中)×競争地位(中)=収穫
優先順位中(右下部分)
業界を更にセグメント化し、集中的に資源を投入して利益を確保する
業界の魅力度(低)×競争地位(高)=選択的強化(差別化戦略)
業界の魅力度(中)×競争地位(中)=利益確保
業界の魅力度(高)×競争地位(低)=選択的強化(差別化戦略)