孫氏の兵法
中国春秋時代(前770~前403)に斉の国に生まれた孫武が書いた
第1篇の冒頭(計篇)
孫子曰く、兵は国の大事、死生の地、存亡の道、察せざるべからず。
ゆえにこれを経るに五事をもってし、
これを校ぶるに計をもってして、その情を索む。
軍事は国の重大事であり、その死生を分ける地や存亡の道は熟慮せよ。
これを謀り考えるには五つの事項と七つの基準で実情を探れ。
経営は企業にとっての大事である。
社員の死活、企業の存亡がかかっているから熟慮が肝心だ。
それだから、経営は五つの視点と七つの基準で考慮・比較して、
適切に判断せよ
五事(計篇)
一に曰く道、二に曰く天、三に曰く地、四に曰く将、五に曰く法。
道は国家の上下が心を一つにするそのより所、
天は季節や天候などの自然環境、
地は戦場の地形であり、
将は軍団を率いる統率者、
法は統率を可能とする規則
道=ミッション
天=マクロ環境
地=業界・市場
将=リーダー
法=内部環境
七計(計篇)・・・ライバルと比較せよ
曰く、主いずれか道ある。
将いずれか能ある。
天地いずれか得たる。
法令いずれか行われたる。
兵衆いずれか強き。
士卒いずれか練れたる。
賞罰いずれか明らかなる。
吾れこれをもって勝負を知る。
ミッションを理解しているのはいずれか。
リーダーの能力が高いのはいずれか。
有利な環境はいずれか。
組織の制度が適切なのはいずれか。
組織力が優れているのはいずれか。
社員が訓練されているのはいずれか。
賞罰が公明なのはいずれか。
勝敗はこの比較で分かる
主=経営者
将=リーダー
天地=環境(マクロ環境、業界・市場)
法令=組織の制度
兵衆=組織力
士卒=社員
賞罰=賞罰
戦わずして勝つ(謀攻篇)
孫子曰く、およそ兵を用うるの法、
国を全うするを上となし、国を破るはこれに次ぐ。
(中略)
このゆえに百戦百勝、善の善にあらずものなり。
戦わずして人を屈するの兵、善の善なるものなり。
およそ軍事というものは、
国を保全維持するものであって敵国を打ち破るものではない。
(中略)
だから、百戦百勝は最上ではなく、
戦わずして相手を屈服させるのが最上なのだ
およそ経営というものは、自社の競争優位を保つのが上策で
ライバルを打ち破るのはそれに劣る。
(中略)
したがって、百戦百勝は決して最上の上ではない。
戦わずしてライバルを屈服させるのが最上の上なのだ
詭道
ライバルをあざむく戦略や戦術
ライバルとの違いを出す戦略や戦術
他社と違う独自性のあるポジションを創り出すこと
つまり戦略的ポジショニングを意味する
詭道を徹底してこの戦略的ポジショニングを築くこと、
そうすれば戦わずして相手を屈服させられる
不敗の態勢(形篇)
孫子曰く、昔のよく戦うものは、先ず勝つべからざるをなし、
もって敵の勝つべきを待つ。
勝つべからざるは己に在り、勝つべきは敵に在る。
ゆえによく戦うものは、よく勝つべからざるをなす。
敵をしてこれに勝つべからしむることあたわず。
昔の強者は、まず敵に負けない態勢を整え、
そのあとで敵に勝てるチャンスを待った。
そもそも、敵に負けない態勢の構築は自身の問題であり、
敵がスキを作るのは敵の問題である。
いくら強者といえども、敵に負けない態勢は作れるけれど、
敵に自ら負ける態勢を作らせることはできない
まずは敵に負けない態勢を作りなさい。そして敵のスキを待ちなさい。
敵に負けない態勢の構築は自分自身の問題で、
敵がスキを作るのは敵の問題だ
敵に負けない態勢を構築するのは、
自分でコントロールできる問題です。
だから為せば為すほど強固な態勢を作れるでしょう。
しかし、敵が作るスキは自分でコントロートルできない問題です。